流動性のわなとは?
こんにちは、smorceです。
昨日の金融市場では、このようなニュースが流れていました。
記事を要約すると
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・日本の上場企業の手元現金は506兆4000億円で、過去最高を更新。2013年3月に比べ3倍余りに増加
・利益の70%を株主還元できるはずが実施分は40%
・自社株買いと配当支払い増えるも、現金保有は引き続き拡大する可能性
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とのことです。
量的金融緩和により市場に資金を注入したい日銀ですが、その思惑とは裏腹に日本企業は手元に現金を溜めるばかりの状況ということです。
このような状態のことを流動性のわなと呼びます。
流動性のわな
日本は既に流動性のわなに捕らわれています。
そこで、本記事では流動性のわなについて解説したいと思います(^^)
まず前提として、現在の日本はマイナス金利政策を実施していて、国債の利回りはマイナス圏内に突入しています。つまり、十分に金利が低い状態というのが理解する上でのポイントになります。
景気が悪い時には、伝統的な金融緩和によって金利を引き下げ、市場にお金を供給することで景気を刺激していくわけですが、名目金利がこれ以上下がらない下限に到達してしまったため、いま以上に流動性が提供できず、身動が取れない「罠に陥った状態」になりました。これを「流動性のわな」と呼びます。
このような状態においては、金融政策の有効性は完全に失われてしまい、理論的には金融政策は無効となります。
流動性のわなに捕らわれている状態では、金利が低くても企業や個人の投資・消費は増えません。
金利が十分に低いにも関わらず、投資や消費が増えていかない理由は、デフレによって物価が下落していくからです。
金利が下がっていても、モノの価格も下がってしまうために、お金を借りて設備投資をして新しいビジネスを起こしたり、値上がりを期待して株式や不動産、商品を購入するよりも、「何もせずに現金を保有しているほうが安全」という心理が働きます。
また、デフレ下では貨幣の価値が上がるため、現金を保有しておくインセンティブも働きます。
例)名目金利が1%と十分に金利が低い状況で、デフレで物価が2%下落した場合
設備投資の為に企業がお金を借りる場合、本来であれば1%という低い金利負担で済むはずですが、販売する商品の価格も2%下落してしまう為、実質的に3%の金利負担になります。
このような状況が発生する為、低金利のメリットを享受できず、お金を借りるインセンティブが失われ、結果的にお金の流動性が低下するわけです。
流動性のわなに捕らわれている状態では、金融政策の効果が表れないので、財政政策と併せて対応する必要があります。(財政政策とは、主に財政出動などです)
ECBも日銀と同じような状況の為、金融政策だけでは対応できず、包括的な政策パッケージを検討しているようです。以下の記事で解説されています。
ECB、包括的刺激策決定の公算 利下げや金利階層化など=関係筋
ECBの対応は日銀にとっても参考になるでしょう。
(ですが、現在の日本の状況は?というと、①消費税の増税②インボイス導入③最低賃金の引き上げのトリプルパンチが控えており、ますます市場に資金が流れていきづらい状況です。ECBとは逆の対応をしていますね…)
自社株買いについて
一番上で紹介させて頂いた記事の中で「自社株の買い戻しは過去最高水準に達した」と書かれていますが、これは理に適った行動です。
企業の手元にある現金が過去最高を更新したわけですが、その現金をどの投資に回すのか決める際に、設備投資やR&Dによるリターンが望めない情勢であれば、自社株買いによって配当利回り分の確実なリターンを取りに行くのが合理的といえます。
そういった理由から「自社株の買い戻しが過去最高水準に達した」と推測されます。
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